こちらのページでは、パイオニアエコサイエンス(株)の提唱するトマトの栽培手法「ソバージュ栽培」についてご紹介いたします。これからソバージュ栽培を始めたい方、やり方を見直したい方に向けた内容となっておりますので、よろしければ栽培時の資料にご利用ください。
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ソバージュ栽培とは?
ミニトマトの露地栽培で、野性的(ソバージュ)に育てる栽培方法のこと
ハウス栽培と異なり、できるだけ設備投資を少なくし、省力化することにより低コストで高収益を目指す、トマトの新しい栽培方法です
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ソバージュ栽培の特徴
できるだけ人手を加えず、省力で行う栽培
設備はU字支柱とネットにマルチのみで、初期投資を大きく削減
株間は80~100cm、条間、畝問は2mとゆったリとる
交配作業は行わず、誘引や芽かきを必要最小限にするため、労働時間が大幅に軽減できる
葉も多く根も大きくなるため、乾燥に強く、裂果や尻腐れ果の発生も少ない
病害の発生も少ないため、農薬の散布回数や散布量も減る
その姿はまさしくジャングル!
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葉かきは不要
葉の枚数が多いほど光合成能力は高まる
ハウス栽培で葉かきをするのは、風の流れを良くすることによリ湿害になりやすい状況を防ぐためであり、露地はハウスより風か通る
トマトの重要な成分である「リコピン」生成の温度帯は12~32℃(適温は20~25℃)である
夏の露地載培では、葉の繁茂による葉陰(リーフカバー)で温度を抑制することがポイントである
ビーク時は一面真っ赤に!
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芽かきは不要
【1本仕立ての場合】
芽かきをして成長点を制限すると、実の大きさは安定しやすいが、水分や気温、湿度など環境変化に敏感になリ、樹勢の管理が難しい
【多本仕立ての場合】
成長点が多いと章素や水分の吸収が分散される
根の張リは地上部の生育に比例するため、芽かきをしないことで、地上部は繁茂し、根の張りも強くなリ、環境変化に適応する
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根張りが旺盛
吸収力が高まり、水や窒素だけでなく、カルシウムやほかの成分もよく吸収するため、大玉トマトでよく発生する尻腐れ果(カルシウム欠乏)は起こリにくくなる
根が深いところまで伸びるため、地表面と異なり干ばつや日照による地温の上昇など天候の影響を受けにくくなる
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植栽密度 慣行栽培 1600〜2000株 ソバージュ栽培 500〜600株 管理作業 慣行栽培 芽かき・交配・誘引・葉かき・潅水が必要 ソバージュ栽培 交配や潅水はほぼ不要
芽かき葉かきは2段目までとする
誘引はマイカ線などで引き上げる慣行栽培の約1/3〜1/4、でも
単位面積当たりの収量は
同じなんです!
一番肝心なことは、「今までのトマト栽培から発想を転換する」ということです
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圃場準備・施工
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step1畑の選定
土質はあまリ選ばないが、排水が良く、しかも保水力があリ、有機質の多い土壌が適する
step2土壌改良
土壌改良資材と堆肥などの有機物(堆肥は必ず完熟したものを使用)を全面施用し、耕起を深めに行い、土を膨軟にするとともに排水対策を十分に図る(土壌改良資材は土壌条件によって施用量を加減する)
step3元肥
ハウス載培よリ多めにし、樹勢維持のため全面施肥を行う
長期間肥効がある肥料や有機質を含んだ肥料を主体として施用する
施肥量(土壌改良材も含める)は土壌診断をもとに決める
step4耕起・畝立て
畝立て・マルチ作業は土壌水分が適度にある状態で行う
定植1週間前にはマルチをして地温を高めておく
畑の排水不良が心配される場合は、畝の高さを20cm前後とする
畝はU字パイプの幅にあわせて幅90cm前後にする。条間は2m程度とし、作業性を良くする
畝間に防草シートを設置することにより、雑草対策と乾燥防止に役立てる
step5病害虫予防
収穫作業を支柱の外側だけでなく内側からも行うため、支柱の幅および高さはともに2mを必要とする
支柱をつなぐ直管パイプは、支柱天端中心に1本、横(地上120cm程度)2本は必ず設置する。できれば支柱曲管部に2本の計5本を設置したほうが良い。さらに暴風や豪雨に耐えられるように筋交や単管パイプで補強する
ネットはキュウリ誘引用のネットを利用する
step6支柱設置時のポイント
支柱が低かったリ狭かったりすると内側から収穫ができないため気をつける
畝間に防草シートを設置することで、作業しやすいうえに雑草対策となる
台風など大風を考慮した設営が重要となる
支柱が垂直なため、落ちた状態
内側を歩ける高さをキープ
支柱が低いと内側から収穫できない
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ソバージュ栽培の実際
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ソバージュ(露地省力)栽培歴
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step1苗の準備
定植の2か月前から準備 ※定植時期から逆算
土壌病害を避けるため、接木苗を推奨
樹勢を維持するため、50穴セル苗か9cm以上のポット苗を使用
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step2定植
定植時期は、遅霜の心配のない5月中旬以降が望ましい
第1花房の1番花が固いタイミングで定植する(樹勢の強化)
晴れて風も穏やかな日を選んで定植する
植え付け前にポットに十分潅水しておく
植え付け時に花の向きをそろえるとその後の管理が容易になる
植え付け後、直ちに誘引を行い、風による傷みを防ぐ
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step3定植後の管理
生育初期は風で茎が折れないようにテープナーなどで枝をネットに誘引する
また、根が活着するまでは潅水が必要
活着し、ある程度樹勢が旺盛になりだしたら株元の整理を始める
樹勢が旺盛になりだしたら株元の整理を行う -
step4整枝・誘引
株元の通気を良くするため、2段目の果房まではわき芽を摘除する
主枝は直立させて適宜ネットに止める
主枝を直立させ、誘引する(イボダケを使った誘引例)株元は2段目まで芽かき、葉かきを行い、風通しを確保ある程度繁盛したら、マイカ線などで引き上げる
肝心なことは枝が地面に垂れ下がらないようにすること
脇芽が扇型に展開すると管理がしやすい
枝が通路側に倒れないようにマイカ線などで引き上げるstep5追肥
1回目の追肥は定植後50日程度から草勢を見て行う
肥効の急なものは望ましくない
5月下旬定植の場合、8月中旬から下旬にかけて収穫のピークを迎えるため、葉面散布や土壌灌注なども組み合わせ、草勢の維持をはかる
2週間に1回 窒素成分で1kg(10a当たり)を通路に追肥
step6裂果
雨による土壌水分の変動や強い直接日光を受けた場合に裂果しやすい。特に株元に近い果実は裂果しやすい
高温や干ばつによる果皮の老化も影響する
対策
露地で雨よけなしで栽培することから、ある程度の裂果はやむを得ない
軽減策として、肥沃で排水の良い土壌にすることが最も有効である
水田転換畑では、耕盤の破砕や圃場全体の深耕を行うほか、暗渠や明渠を設置して排水性の向上を図る
リーフカバーで日差しによる日焼け、乾燥および果面温度の上昇を抑えるとともに、雨が直接果実に当たらないようにする。そのため、生育初期に樹勢を強めて茎葉を繁盛させる。生育後半は葉の少ないところに枝を再誘引する
割れた果実はすぐに落とす(着果負担の軽減、病害虫の予防のため)
夏場のハウス栽培では果温が36度にもなる
リーフカバーにより、日焼けや果面温度の上昇を防ぐ
裂果したものはすぐに落とすstep7収穫・調整
収穫は完熟果を順次摘み取る
未熟果は収穫後に着色するが、食味が著しく落ちる
高温期には早朝の涼しい時間に収穫する
より収量を上げるために…
生育盛期に徒長した枝は切り落とし、必要以上に繁茂させないほうが収量性、品質および収穫作業の効率化の面で利点が多い
栽培の特性上、根が強く深く伸びていくための土づくりが求められる。特に、水田転換畑では、土壌物理性の改善が重要である
短期間で高収量をあげるためにはそれに見合う養分の補給が必要となる。収穫期間1.5〜2か月で夏秋ハウス以上の収量となる可能性もあるが、その分の収奪も激しいため、それを補う肥料を施用する必要がある
収穫回数を多くして着果負担を軽減することにより、栄養成長と生殖成長のバランスを良くする(エネルギーを成長点へ)
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病害対策 ソバージュ栽培で発生する主な病気
輪紋病
主に葉で発生し、はじめ暗緑色水浸状の小斑点を生じ、次第に拡大して、円形~楕円形の同心輪紋の病斑となる。
茎・葉柄・果柄・果実では、初め暗褐色水浸状の小斑点を生じ、ややへこんだ病斑を形成し、後に拡大して同心輪紋を形成する。高温・乾燥下での発症が多く、発病適温は27度前後。肥料不足と乾燥で発病が促進されるので、肥料切れに注意し、適度なかん水を行う。青枯病
病原菌は土壤中に生息する細菌であり、トマトのほかにも、ナスやピーマン、ジャガイモ、イチゴなど200種以上の作物を侵す多犯性の典型的な土壤伝染性の細菌病である。
発病株は周囲への伝染源となるため、見つけ次第抜き取る。被害作物は圃場に鋤きこまずに焼却処分する。汚染している圃場で使用した農機具は良く洗浄・消毒する。疫病
関東地方などの温暖地では水田転換畑などの土壤水分が多い圃場で発生している。疫病は地上部のあらゆる部分に発生し、葉でははじめ灰緑色水浸状の病斑を生じ、拡大して暗褐色の大型病斑となる。露地栽培では風雨で土がはね返り被害が多くなる傾向にあるため、畝にマルチをして土のはね返りを防ぐ。チッソ肥料が多いと茎葉が繁茂し、被害を助長するので注意する。灰色かび病
葉や茎、果実などに発生し、葉には褐色水浸状の円形病斑を、果実には水浸状の病斑を生じ、表面に灰色のかびを生じる。低温、多湿、多肥条件や芽かき、葉かきなどで傷がついた時に発生しやすく、特に古い花弁から発生することが多い。ソバージュ栽培では、生育後半から終期にかけて多く見られる。罹病した花や葉などの被害部分を取り除くのはたいへんなため、予防と初期防除に努める。斑点病
下葉より小斑点が生じて周囲は黄色くなり、病状が進むと上位葉に蔓延する。7月後半より発生が見られる。発生前に薬剤を定期的に散布し、予防することが大切である。黄化葉巻病
タバココナジラミが媒介するウイルス性の病気で、成長点付近の新葉が端部から黄淡色に変色しはじめ、しだいに葉脈間が黄化し、葉がカールしたように巻いた状態になる。ウイルス性の病気なので、薬剤による治療が出来ないので発病してからだと防除法がなく予防・対策を心がける。発症した場合はすぐに株ごと抜き取り圃場から出して処分する。TY(黄化葉巻耐病性品種)を栽培していても外部拡散を防ぐため、こまめな防除を心がける。